富士通の事例に学ぶ、今 企業が取り組むべきAI検索への対応
Share「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」というパーパスを掲げ、データとAIの活用を軸に社会課題の解決に取り組む富士通株式会社(以下、富士通)。同社は、検索行動が従来の「ググる」から「生成AIとの対話」へシフトする変化をいち早く捉え、大規模言語モデル最適化(LLMO)の取り組みを開始。その分析ツールとしてユーザーローカルの『User Insight』を活用している。
今回は、ユーザーローカルが富士通の一尾幸史氏、坂本歩未氏と登壇した『デジタルマーケターズサミット 2026 Winter』より、富士通のAI検索への対応策と組織的な取り組みについての登壇レポートをお届けする。
- 富士通株式会社
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- グローバルマーケティング本部 デジタルエクスペリエンス統括部
マネージャー 一尾 幸史氏
坂本 歩未氏 - 株式会社ユーザーローカル コーポレートセールス部 カスタマーサクセス エンタープライズチーム
塚越 悠貴
- グローバルマーケティング本部 デジタルエクスペリエンス統括部
生成AI経由のWeb流入はここ1年で約4倍に
富士通のグローバルマーケティング本部でデジタル接点全般のパフォーマンスを統括する一尾氏。Webサイトへのトラフィックデータを見る中で、自然検索からの流入が徐々に減少している事実に直面していた。 Googleの「AI Overviews」に代表されるように、検索結果の画面だけで情報収集が完結する「ゼロクリック」の影響や生成AIの普及により、自然検索によるWebサイトへの流入数は減少傾向にあると言う。
しかし、一尾氏はこれをネガティブには捉えていない。ここ1年で徐々に生成AIからウェブサイトへの流入が増加している状況にある。
「WebのPVだけを見ていてもしょうがない時代になってきました。生成AIとの会話数は膨大に増えており、トータルでの検索行動はむしろ増加しています」と一尾氏は語る。また、生成AI経由で流入したユーザーはある程度の課題感、あるいは具体性を求めており、そういったユーザーはその先のステップに進みやすいとも考えられる。
これらのことも考慮し、生成AIに”富士通”を正しく学習させて、適切な文脈で富士通を取り上げてもらえるように対策することが重要だ。
そこで富士通では、従来のPVなどの指標に加え、「生成AIにどれだけ正しく引用されているか」「何番目に引用されているか」という新たな指標も重視するようになった。
変化への対応スピードこそが重要
富士通がこうした先進的な取り組みを進める背景には、組織全体での危機感と挑戦の姿勢がある。 同社では「LLMOパイロットプロジェクト」という、ブランディングやコンテンツ制作のメンバーを交えた部門横断型のグローバルチームを発足させ、ゴール設定から議論し、調査・仮説・実行・分析のサイクルをスピーディに回し始めた。
「AIフレンドリー」なWebサイトへの3つの改善
では、具体的にどうすればAIに引用されるのか。坂本氏は、AIが情報の構造を理解しやすい形にコンテンツを整えることが重要だと指摘する。例えば、質問と回答が明確なQ&A形式のコンテンツや、主語と述語がはっきりした文章構造が挙げられる。また、適切なタグ設定やページ読み込み速度の改善など、技術面での最適化も重要だと言う。
具体的な事例として、以下の3点に注力して改修を行い、一定の成果が出たという「Uvance Wayfinders」での取り組みを紹介する。
見出しの明確化: 以前は「英語を使ったかっこいい表現」や抽象的な言葉が多かったが、AIが内容を理解しやすいよう、具体的で分かりやすい見出しに修正した。
Alt属性の追加: 画像のAlt属性(代替テキスト)が未設定だった箇所に対し、AIが文脈や意味を理解するための重要なテキスト情報として適切に追加した。
リンク説明の適正化: 関連リンクの説明文が、リンク先の内容(人物紹介)ではなくサービス自体の説明のように誤読される恐れがあったため、「人物紹介ページであること」が明確に伝わる表現に変更した。
この改善の結果、以前は「テクノロジーコンサルティング企業」に関するAIへの質問で富士通が含まれていなかったが、対策後、実際に言及されるようになったという明確な成果が得られた。坂本氏は「AIフレンドリーなページに改善することがすることの重要性を、改めて実感しました」と語る。
プロジェクトの進行にあたっての課題
一方で、部門横断で認識を揃えてプロジェクトを進行させるにあたっては、多くの課題があったと一尾氏は補足した。
「課題だらけでした。LLMOは新しい領域のためどこの部署がやるか決まっておらず、気付けば、他の部署でも同じようなことをやっていることが判明しました。 また、「ChatGPTはまだ3歳だから、数年後は別ものになるから無駄ではないか、しばらく落ち着くまで様子見したほうが良いのではないか」という意見もありました。
しかし、この領域はとんでもないスピードで進化しています。”落ち着くまで待つ”という考えでは永遠に何もできません。私が一番重視しているのは『変化への対応力とスピード』です。 もし状況が変われば方針を変えればいいだけなので、今やらない理由にはならない、というのが結論です。 KPIの設定も難しかったので、まずはパイロットプロジェクトとして仮説検証とノウハウ蓄積をゴールにし、テーマを絞って進めています。手法も確立されていない試みなので、裾を広げすぎないように気を付けてプロジェクトを進めています」
User Insightで「引用状況」と「行動」を可視化
こうした施策の効果検証において、富士通では『User Insight』を活用し、生成AIの挙動や流入後のユーザー行動を可視化している。坂本氏は「どのテーマで自社が引用されているか、競合はどうなっているか、User Insightを使えば簡単に把握できるため大変有用です」と評価する。
User Insightの活用 1 (引用状況の把握)
『LLM引用チェックツール』を活用し、自社や競合がどのクエリでどう引用されているか、回答内容も含めて把握する。
User Insightの活用 2 (AI Overviewsの監視)
対策実施後や情報を更新したタイミングで、GoogleのAI Overviewsでの引用状況を確認する。
User Insightの活用 3 (生成AIからの流入状況を把握)
生成AIからの流入数を日々ウォッチし、どのLLM(ChatGPT, Gemini, Claude等)からの流入が多いのか、またどのページによくアクセスされているのかといった現状を把握する。
User Insightの活用 4 (流入後のサイト内行動を分析)
ヒートマップを用い、AI経由ユーザーがサイト内をどのように閲覧しているか、AI経由ユーザーがサイト内のどこを熟読しているかを分析する。
ヒートマップを用いた分析について詳しく補足すると、AI経由で流入するユーザーの質の高さにも注目するポイントがある。その行動パターンには明確な特徴があった。「生成AIから流入してくるユーザーは、他のユーザーとサイト内の行動が明らかに異なります。より詳細な情報を求め、強い課題感を持っている傾向があります」と一尾氏は指摘する。
実際に『User Insight』のヒートマップ機能で海外向けサイトを分析したところ、AI経由のユーザーはページ下部の「問い合わせ」や「キャリア(採用)」エリア(ページ全体の20%の位置)や、「顧客事例」エリア(50%の位置)を熟読していることが判明した。
このデータは、AI経由のユーザーが高い熱量を持っていることを裏付けている。坂本氏は「流入の『量』を見がちですが、 行動の『質』を見ることも重要です。今後は流入元の特性に合わせたコンテンツの出し分けなども検討していきたい」と展望を語った。
また、新しい記事を作る際にはSEO分析機能を活用し、検索上位サイトの構成を分析して制作に役立てていると言う。
まとめ:AI検索対策で成果を出す2つのポイント
最後に、今回の事例から見えてくる企業が意識すべき点として、以下の2点が挙げられる。
1. PVでは測れない価値を捉える評価軸へ
WebサイトのPV総数の増減に一喜一憂するのではなく、生成AI経由の流入や引用状況といった新たな指標にも注目する必要がある。また、生成AI経由のユーザーが持つ高い目的意識やコンバージョンへの確度といった「質」の違いにも着目すべきである。ユーザー行動を可視化・モニタリングし、AIに正しく引用されるための対策を行うことで、より価値の高い顧客接点の創出につながる。
2. 「正解」を待たず、スピーディに仮説検証を行う
生成AIの領域は変化が激しく、確立された正解が存在しない。だからこそ、「様子見」をするのではなく、富士通での事例のようにパイロットプロジェクトとして小さくても良いから検証を始めることが重要だ。失敗を恐れず、変化に合わせて柔軟に対応を変えていくスピード感が、競争優位性を生み出す鍵となる。
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